金子温泉   伊予三島市 金子3-3-1 H11廃業


 JR伊予三島駅の西、R11号三島金子交差点からR319号を100mほど南下した交差点を東西に延びる道が讃岐街道である。右折して讃岐街道を西に行く(一方通行なので歩きか2輪でしかこの方向には行けないが...)とJRの踏切がある。写真のようにこの踏切を越えた三叉路交差点の角にこの銭湯がある。鉄のたがの入った古いコンクリート煙突、屋号の上の温泉マークが傾いて落ちかけているのが、その歴史の古さを表している。正面の新しい自動販売機が異様に白く見える。すぐ裏が製材所であり、燃料はそこから調達できるのかもしれない。

 入って脱衣場に上がると、がらんとした広さを感じた。丸机といすが4脚、マッサージイスと体重計がある。しかし、ここの良さ?はしきり壁にある。上部に筒状の渋い蛍光灯(点かないかも)があり、腰の高さほどにある物置は、浴室の境にある洗面所の前で異様に出っ張っており、その下にはちゃんと鉄の支え柱が付いている。大鏡は「清酒豊稔」寄贈のものである。そして何と二桁の電話番号(91)の「洋服の京極」の広告がある。脱衣場正面上の注意書きも昭和23年のものである。天井には3枚羽のファンがある。

 浴室の床はいろいろな色のタイルが敷き詰められてあり、側面は白タイルで、壁絵はもちろん飾りっけはほとんどない。浴室の中央に楕円の浴槽があり、奥のコックで注水・注湯している。この日はバスクリンが入っていた。右奥の浴槽は使われていないが、電気配線の跡があるので、電気風呂であったと思われる。しきりの上部には、今は珍しい木の枠に入れられたモザイクガラスがある。カランは黒に○印のもので、1つだけシャワー付きコンビネーション・カランがあるが、湯の調節が難しい。その近くに、女風呂側からしか開かない小さな四角い窓があるのは、石鹸などのやりとりをするところなのかもしれない。
 銭湯の前を電車が通ると、小気味の良い音が響き、昔忘れていた光景をふと思い出したような気がした。(H8.4)

 平成11年 三島・川之江地区の貴重な銭湯であるこの金子温泉も廃業したというメールが届いた。とても残念なことである。平成27年にここに来てみるとすでに銭湯の建物はすべて取り壊されていた。ちょっと落ち込んで入るといきなり踏切が鳴り始めた。しばらくすると予讃線の顔?であるアンパンマン特急が通過していった。これを見送りながら時代の流れを深く感じた。