金生湯  四国中央市(旧川之江市)金生下分334-3 廃業


 川之江庁舎の交差点から北東に500mほど進み左折して300mほど進むと速玉神社がある。その交差点を左に曲がるとすぐにこの銭湯がある。隣が広い空き地になっており、3本のワイヤーで支えられたすっきりとしたスチール煙突も確認できるが、かなり古そうな銭湯のようである。普通の家のような門構えである。民家の庭のような所に「金生湯出入口・駐車お断り」の光看板が置いてある。その看板の奥に入り口がある。
 側面から入る形で、靴を脱ぎ脱衣場に上がる。しきりの上には4枚羽のファンがあり、その下に3桁の電話番号があるCM付きの鏡が3つある。それにカラオケのトロフィーが3つとテレビもある。しきりの上の神棚は2つも鳥居のあるお稲荷さんである。
 浴室に入ると座椅子のかわりに置かれた6枚のスポンジマットに目がとまった。湯桶は3つである。中央の楕円の浴槽には正面壁から直接伸びた数本のパイプから湯や水が送られる。左奥にもう1つ湯船があるが使われておらず、バルブも開かない。カランも不調のものが多く、奥のカランをひねると最初のうちは赤っぽい水が出て五杯目くらいから湯が出だした。床は青白のチェック模様にタイルが打たれており、側壁は白タイルである。天井はドーム型で、しきりの上に小さな蒸気抜きがあるが、あまり役に立っているとはいえない。女湯の上には大きな窓がある。しきり壁の奥には三つの固定シャワー付きのカランがあって、その上に富士山の壁絵がある。二艘の帆船のうく芦ノ湖っぽい湖の向こうにある火山(箱根山か?)越しに見た珍しい構図の富士である。軽いタッチで描かれているが、なかなかすばらしいデッサン力で色のバランスも良い。湖に安易に富士をうつさず、見たままの風景を描いているようだ。いろいろと時代の波に押しつぶされそうな銭湯ではあるが、この壁絵を眺めながら湯に浸かれるだけでもこの銭湯を訪れたかいがあるというものだ。(H8.1/13)

 平成10年5月に再び行くと、煙突はなく後ろの家はつぶれもうすでに廃業していた。愛媛最東端の銭湯であったこの銭湯も時代の波には勝てなかったと思われる。平成27年にも訪問してみたが平成10年の時とほぼ同じ状態で建物は残っていた。