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パンドラの箱


『真秀には翠』の中で佐伯翠がパンドラの箱の比喩を使ってますが、パンドラの箱の正確(?)なお話ってご存知でしょうか?


最初は思い付きで適当に文章中に入れていたのですが、良く考えると箱の中に希望が残ったから何なんだろうと思いましてまたまた杜は図書館に走りました。


以前調べた時には丁度良い文献があったのですが、HP用にもう一度再検索に行くと先日参考に読んだ本が見当たりませんでした。

まず、プロメテウスのゼウスに対する反逆心が事の起こりです。

プロメテウスはイアペトスの4人息子の中のひとりで、彼が人間を粘土でつくり出したと言う言い伝えもありますが、広く一般的に受け入れてはいないようです。


『神統記』(ヘシオドス)ではプロメテウスは人間の恩人としてしか考えられてはおらず彼は人間の為に幾度かゼウスを欺こうとしました。

最初はある厳かな儀式の時

プロメテウスは牛を二つに分けました。
片方は牛の肉と内臓を動物のお腹の中に隠し布に包み、もう一方には肉を取り去った骨だけを美味しそうな白い脂肪に包んでゼウスに差し出します。

どちらか一方を選ぶようにと差し出されたゼウスは、当然の事ながら白い脂肪の方を選択します。
残った一方は人間のものとなるのです。


白い脂肪が実は骨だけだと気付いたゼウスは大激怒!


プロメテウスだけでなく人間にまで怒りを覚えたゼウスは、人間を罰するために人間達に火を与える事を拒みます。

そこでプロメテウスは天に昇って行き「太陽の車」から火のもとを盗み、これを葦の茎の中に隠して地上に持ち帰りました。


するとゼウスはこれに報いる見せしめとして、プロメテウスを鋼鉄の綱でコーカサスの山頂に繋ぎます。
そしてそのプロメテウスの肝臓を大蛇エキドナから産まれた一羽の鷲が食らうのですが、彼の肝臓は食べられても食べられても生えてくるのです。


この処刑はやがてヘラクレスが矢をもって鷲を射殺し巨人の縛めを解くまで続くのですが、ゼウスはプロメテウスが永遠に山頂に縛り続けられている事をステュクス(冥府の川・神々は厳かな誓いをこの川の名によって行っていた)にかけて誓っていた為に、プロメテウスが岩石の一片を嵌め込んだ鋼鉄の指輪をはめる事で、ようやく山頂から逃れる事が出来たのです。


ところがゼウスの処刑はこれだけには留まらず、人間にはさらに厳しい処罰を与える事になります。
(理由は取り返しの付かない事になったからだと文献には記されていましたが、はっきりした理由はちょっと分かりません。)


ゼウスはヘパイストと女神アテナに命じそれまでに知られなかった生きものをつくらせ、神々をしておのおの一つづつの美しい性質でそれを装飾します。



この生きものが「女」なのです。



彼女は神々からたくさんの贈り物を受けていたので、パンドラ(あらゆる授かりものを持っている者)と呼ばれました。

パンドラは美・優雅・器用な手・説得力を備えていましたが、ヘルメスは彼女の心に虚言と欺まんを植え付けておく事にしたのです。


そしてゼウスはパンドラをプロメテウスの弟エピメテウスに贈ります。


エピメテウスは兄プロメテウスから、ゼウスからは何も貰うなと忠告されていた事も忘れ、パンドラの美しさに迷いこれを受け入れたと伝えられています。


さて、地上の何処かにありとあらゆる禍が閉じ込められている壷があった。
そしてその壷には中のものが外へ飛び出さないように蓋がしてありました。


が、パンドラは地上に来ると直ぐにこの壷を発見し、好奇心に駆られて蓋を取ってしまいます。

そこでありとあらゆる禍が飛び出して、人間世界に散らばってしまったのです。

驚いたパンドラは慌てて蓋を閉めたので、底の方にあった「希望」だけがそこに閉じ込められてしまったと言う事です。

別の説ではこの壷は婚礼の際にゼウスからの贈り物としてパンドラに与えられたもので、中にはありとあらゆる仕合わせが入っていたのですが無分別なパンドラがそれを逃がして、天上にやってしまったと言う事になっているそうです。

いずれにしても「希望」だけが人間に与えられた悲しい慰めとなっているのです。


参考文献:
『ギリシア神話』(白水社)−ピエール・グリマル著 高津春繁訳

と言う事ですが、正確にはパンドラが開いた壷の事なんですね。

私が以前読んだものにはこれは女性蔑視だと言う解説が書かれていました。
自分が女だから庇う訳ではありませんが、確かにこの内容ではあまりに女って馬鹿に見えますよね。



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