論文集

これまでに私が発表した論文のタイトル・要旨の一覧です。(新作順)

 


βサラセミアの一家系
     阿波谷敏英
月刊地域医学 Vol.20 No.8:686-690,2006
<要旨> 患者は41歳男性.人間ドックで,ヘモグロビン12.6g/dlと軽度低下,総ビリルビン1.5mg/dlと軽度上昇を指摘された.溶血性貧血を疑い再検査を勧めた.患者は以前より「貧血気味であるが治療の必要なし」と言われていた.末梢血では,ヘモグロビン13.3g/dl,平均赤血球容積(MCV)65.3μ3,網状赤血球2.1%,血清鉄160μg/dl,不飽和鉄結合能151μg/dl,塗沫標本で標的赤血球を認め,腹部超音波で軽度脾腫を認めた.ヘモグロビン分画ではHbA2 5.9%,HbF 3.7%と増加しており,βサラセミアを疑った.また,患者の子供4人の血液検査を行い,うち1人に患者と同様の所見を認めた.患者および所見のあった子供の遺伝子分析を行い,βグロビン遺伝子のコドン40AGG→40AGであるβ0サラセミアであることが確定された.この変異は,日本では現在までに一家系で見出されているのみであった.  サラセミアは,日本では稀な先天性溶血性疾患と考えられていたが,軽症のヘテロ接合体では無症状で看過されている症例も多いと考えられ,実際の有病率は人口1,000人に1人とも言われている.近年,遺伝子研究の進歩により,日本では,βサラサミアの遺伝子異常は40種類以上が報告されている.鉄欠乏性貧血と誤診されている場合もあり,遺伝相談も含め,プライマリ・ケアにおいても認知しておくべき疾患であると考えられる.

死亡前一年間の医療および介護費用の検討
     阿波谷敏英
季刊社会保障研究 Vol.40 No.3:236-243,2004

下手の横好き「天体観測」
     阿波谷敏英
地域医療 Vol.41 No.1:88-89,2003

私の地域包括ケア論「良質の医療=水」のような存在に
     阿波谷敏英
地域医療 Vol.38 No.2:138-140,2000

21世紀の自治体病院のあり方を探る
     阿波谷敏英
全国自治体協議会学会雑誌 Vol.39 No.8:15-49,2000

国保直診の仲間たち「プロの仕事」
     阿波谷敏英
地域医療 Vol.38 No.1:60,2000

在宅ケアにおける医師の立場
     阿波谷敏英
<要旨> 介護保険制度導入も間近に迫り、近年、在宅医療の必要性がクローズアップされている。在宅医療において医師は患者の治療者としての役割を果たすことは勿論であるが、訪問看護婦、保健婦、ホームヘルパー、理学療法士など各職種と連携をとり、また、患者、家族とも信頼関係を築き、在宅ケアのコーディネーターとしての手腕が要求される。
 本稿においては、我々が在宅医療で取り組んだ症例を呈示し、在宅医療の医師の役割について考えてみたい。 (臨床医 26:212-214,2000

前腸性肝嚢胞の一例
 A Case of Ciliated Hepatic Foregut Cyst.
   阿波谷敏英・森田荘二郎秦康博・森田吉多佳・公家健志・尾崎信三・堀見忠司
<要旨>典型的な前腸性肝嚢胞を一例経験したので報告する。症例は、66歳男性、胃癌の手術後の経過観察のためのCTで嚢胞性の肝腫瘤を指摘され紹介となった。画像診断上、前腸性肝嚢胞と診断され、その後2年間経過観察を行い形態の変化を認めなかったが、本人の強い希望により手術目的で入院となった。術前の腹部超音波検査で肝S4の被膜直下に嚢胞を認めた。術前の腹部CT検査では、肝S4に比較的平滑な楕円形の低吸収域を認め、嚢胞内容は造影効果を受けなかった。MRIでは、嚢胞内容はT1強調画像で肝実質より若干の高信号域、T2強調画像で高度の高信号域として描出された。病変部の核出術を施行した。嚢胞は肝表面より半球状に隆起し、乳白色で表面は平滑であった。嚢胞内容は乳灰色で泥状であった。嚢胞内壁は平滑であった。組織学的にも内壁は絨毛上皮に覆われており、前腸性肝嚢胞と診断された。 (画像診断 17:880-883,1997

術前診断可能であった黄色肉芽腫性胆嚢炎の一例
 A Case of Xanthogranulomatous Cholecystitis.
   阿波谷敏英・森田荘二郎秦康博・森田吉多佳・高崎元宏・堀見忠司
<要旨>術前に診断可能であった黄色肉芽腫性胆嚢炎の一例を経験したので報告する。症例は30歳女性、腹痛・発熱を主訴に入院となった。腹部超音波にて著明に肥厚した三層の胆嚢壁と内部の結石像を認めた。単純CTでは著明に肥厚した胆嚢壁と結石像を認め、造影CTでは胆嚢壁内の低吸収域と粘膜面の一様な濃染像を認めた。DIC、血管造影も施行されたが特異な所見は得られなかった。黄色肉芽腫性胆嚢炎の診断のもとに胆嚢摘出術を施行した。病理組織学的検討でも筋層以下に泡沫細胞の集簇を認め、黄色肉芽腫性胆嚢炎と診断された。 (胆と膵 18:295-298,1997

一期的経皮内視鏡的ボタン型胃瘻造設術の経験
 Clinical Experience with Percutaneous Endoscopic Gastrostomy Using One Step Gastrostomy Button.
   阿波谷敏英・澤田努・沖勇一・東谷信宏・井上敬太
<要旨>One Step Button を用いた一期的な経皮内視鏡的ボタン型胃瘻造設術を5例に施行した。造設手技に伴う重篤な合併症は認められず、平均造設所要時間は21分、平均入院期間12.8日であった。造設後には誤嚥性肺炎、低栄養状態の改善が見られ、全例在宅経管栄養が可能となり、quality of life の向上を認めた。本法はSacks-Vine法による胃瘻造設手技と比較して、安全性・簡便性に優れており、また、一期的に胃瘻ボタンが造設できること、閉塞などのチューブトラブルが少なく、チューブ交換に内視鏡を必要としないなどの利点を持ち、今後広く普及する方法と考えられた。 ( 消化器内視鏡9(9):1265-1270,1997

短期間に出血と特異な形態変化を呈した胃inflammatory fibroid polyp の1例
 A Gastric Submucosal Tumor Presenting an Unusual Change of Shape Induced by Neighboring Ulceration.
   阿波谷敏英・依光幸夫・畠山暢生・高松正宏・高崎元宏・菅野尚・吉本光宏・岩田克美
<要旨>症例は70歳の女性で、数年前から無症候性の広基性粘膜下腫瘍(SMT)を指摘され経過観察を受けていた。甲状腺癌の術後に上部消化管出血をきたし、緊急内視鏡でSMTの辺縁に出血性潰瘍の形成を確認し、さらに潰瘍の治癒過程における無茎性から有茎性へのSMTの急激な形態変化を内視鏡的に確認した。有茎性化したSMTに対して、再出血防止の目的で通常の方法で内視鏡的ポリペクトミーを施行し、病理組織学的にinflammatory fibroid polyp(IFP)と診断した。
 IFPは時に急激な形態変化をきたすことが知られているが、本症例は過去の報告例にみられないきわめて特異な経過をとり、その結果、内視鏡的切除が可能となったので若干の文献的考察を加えて報告する。( 消化器内視鏡 7(3):435-439,1995

拡大内視鏡および血管造影にて確認しえた胃angiodysplasiaの1例
 Angiodysplasia of the Stomach Confirmed by Magnifying Endoscopy and Selective Angiography,Report of a Case.
   阿波谷敏英・依光幸夫・山崎隆志・高崎元宏・江口泰右・上野邦夫・松田浩明・笹岡和雄
   徳岡裕文・森田荘二郎・島本政明
<要旨>症例は53歳女性で。吐血を主訴として入院となった。胃内視鏡検査にて胃体上部後壁に約7mmの鮮紅色斑を認めた。拡大内視鏡検査で病変の中心より放射状に伸びる拡張した血管が確認できた。また、左胃動脈よりの血管造影で約1cmの濃染像として描出された。胃angiodysplasiaの診断のもとに、病変部を含む胃部分切除術を施行した。胃angiodysplasiaの血管所見を拡大内視鏡および血管造影像の両者から確認できた報告は本例が最初であり、本症の診断および治療に関し示唆に富む症例と考えたので報告する。( Gastroenterol Endosc 34(12):2885-2889,1992

Expandable Metallic Stents を用いた外傷性胆管狭窄の1治験例
 A Case of Traumatic Biliary Stricture Treated Successfully by Expandable Metallic Stents.
   阿波谷敏英・森田荘二郎・横田哲夫・依光幸夫・近藤慶二・山中康明
<要旨>外傷性胆管狭窄はきわめて稀な疾患であり、本邦では16例が報告されているにすぎない。従来の治療法としては、外科的手術が主であったが、われわれはExpandable Metallic Stents(EMS)を用いた胆管内瘻術を施行し、良好な結果を得たので報告する。症例は56歳男性で、交通外傷で腹部を強打し、肝外側区域に損傷を受けた。受傷13日後より徐々に胆道系酵素と直接ビリルビン値が上昇し、CT、超音波検査にて肝内胆管の拡張を認めたため、経皮経肝的胆道ドレナージ(PTCD)を施行した。PTCDチューブよりの造影で中部胆管に約2cmの平滑な狭窄像を認め、外傷性胆管狭窄と診断した。硬膜外麻酔併用下に4mmバルーンカテーテルで3回拡張術を試みたが、拡張時の疼痛が強く、EMSによる内瘻術を選択した。EMS留置により、肝機能は正常化し、臨床症状も消失した。良性胆管狭窄に対する本法の報告は少ないが、症例によってはきわめて有効な手段であると考えられた。(胆と膵 13:471-475,1992
ホームページに戻る