きじ(その1)



 ある日、往診に行った帰り道路をキジが横切った。運転していた事務長はアクセルを踏み込み轢き殺そうとした。後部座席で看護婦さんが「きゃー」と言っていた。難を逃れたキジは近くの畑に逃げ込んだ。一般的に狩猟では側面から猟犬に威嚇させて飛び立ったところに散弾銃を打ち込むのである。「うまく行けば、今晩キジ鍋ですから・・」と事務長に言われるがままに側面に回り込む。事務長は小石を片手一杯拾い、準備をする。アイコンタクトの後、私はキジを威嚇する。「わんわん」と言ってみたがちょっと情けなかった。見事、キジは飛び立つ。事務長は片手一杯の石を投げつけたが、命中せず、キジは山へ帰っていった。キジ鍋食べ損ねた。やっぱり、往診時には散弾銃を持っていかねばっ。

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