きまぐれ中学日誌

「きまぐれつうしん」を出し始めてしばらくして、その目玉となる企画として、教会のある姉妹に旅行記を書いてもらいました。

彼女はバイクの免許を取って、いきなり大阪から北海道へのツーリングにたったひとりで出かけたという強者で、その道中記を書いてくれました。なにせ免許も取りたてなのですから、ハプニングとトラブルの連続で、『YUKOの北海道中膝栗毛』はたちまち教会内で大評判となり、その勢いで「きまぐれつうしん」も軌道に乗ったというわけです。

5〜16号まで12回にわたって連載された『YUKOの北海道中膝栗毛』も終わり、次はどうしようかと考えました。少し前から始めていた『私は昔の中学生』という企画(教会員にそれぞれの少年少女時代の思い出や、今の中学生へのメッセージを書いてもらうコーナー)も原稿が集まらず、やっぱり人に頼るのはダメだと思い、自分で連載を始めたのがこの『きまぐれ中学日誌』です。

18〜36号まで、とびとびだったのですが、それでも13回の連載になりました。最初は中学時代の出来事をまんべんなく語っていく予定でしたが、ついつい恋の話ばかりになってしまいました。

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その@

今を去ること19年(ゲゲッ!)、昭和46年4月に、ぼくは四国の香川県にある○○中学校というイナカの学校に入学しました。生徒数は1,200名ほど(つまり1学年は400名くらい)で、イナカにしてはけっこう大きな方でした。生徒はたいがい同じ町内にある5つくらいの小学校の卒業生です。

当時、私立はめずらしかったし、ぼくのまわりには私立にいく人はいなかったので、ぼくはそのころ、私立の中学があることすら知りませんでした。ですから、クラスは10組までありましたが、同じ小学校のしかも同じクラスの卒業生が、ぼくの1年2組に5〜6名いたわけです。

ところで、ぼくの学年の生徒たちは、町の教育委員会のテストケースだったのかなんか知りませんが、とにかく、小学校の6年間も中学校の3年間も”クラス替え”がなかったため、つまり、その5〜6名は9年間同じクラス、幼稚園も入れると(ぼくは1年しか行かなかったので)、つまり、中学を卒業する時点で10年間同じクラスだった友だちが3〜4名はいた、ということになります。やれやれ。

さて、その10年間のつきあいだった人たちのひとりに、HYさんという女の子がいました。色が白くてちっちゃくてぽっちゃりした女の子でしたが、彼女はものすごくおとなしい子で、ほとんどその声をきいたことがありませんでした。たとえしゃべっても(たとえば授業で先生に指されたときとか)、ものすごく小さな声(いわゆる蚊のなくようなっていうやつ)なので、ほとんど聞きとれないありさまでした。

ところが!! 中学を卒業して5年ほどたった同窓会の帰り道、たまたま同じ方角なんで、そのHYさんとぼくともうひとり女子がいっしょに帰っていたのですが、そのHYさんが、まあしゃべるしゃべる。今は坂出で看護婦さんをやっていること、その仕事のことや、もうひとりの女の子の仕事がどうのとか、赤木くんは学生なの?いいわねぇとか、とにかくぼくは目が点になってました。おとなしくて、ひっこみ思案で、すぐに顔を真っ赤にしてたあの姿はどこにもありませんでした。

別れぎわにぼくは思わず「ぼくなぁ、今日、HYとはじめて話したような気がする」というと、「そう、なんかみんなにそんなふうに言われるけど、私って昔そんなにおとなしかった?」といって、彼女はしきりに首をかしげていました。(おとなしかったんだよ!!)

さて、中学に入学してまだまもないある日のこと、ぼくは突然「3年生の女子が赤木をよんでくれって言うとるぞ」と友だちに言われて、廊下に出てみると、たしかに、3年生の女子がふたり、何か思いつめたような顔をしてそこに立っていたのでした・・・。

そのA

さて、廊下に出てみると、そこに3年生の女子がふたり、ぼくを待っていました。そして、あなたは赤木△△の(△△というのは、ぼくの3つ年上の兄である)弟か、ときくのです。ぼくがそうだと答えると、相手は一通の封筒を取り出して、これをお兄さんに渡してほしい、というのです。

ぼくには一瞬なんのことだかわかりませんでした。そりゃぁぼくにも、もう好きな女の子くらいはいました。でもぼくは色恋沙汰についてはまだまだ子どもで、目の前の女生徒が兄に恋をしていて、その想いを伝えようと、ぼくに手紙を預けようとしているということを、たちどころに理解するということはできなかったのです。むしろ、そんなめんどくさいことをたのまれたことに気分を悪くしていたほどです。まあ、とにかく手紙は預かることにしました。

教室に戻ると友だちが「赤木、手紙もろたやろ? なかなかやるのー」などとひやかすのです。こいつらはもうすっかり色気づいていたわけですが、ぼくの方はそういうふうにひやかされたことに、ますます気分を悪くしておりました。つまりぼくは、とても生真面目なガキんちょであったのです。

さて、しばらくして、ぼくはこんどは柔道部の連中によびだされました。柔道着をきた7〜8人のむつけき男どもが目の前にたちはだかることとあいなりました。ぼくの運命やいかに・・・

そのB

さて、ある日ぼくが廊下を歩いていると、おい!と呼びとめる声がきこえました。ふりかえってみると、今まさにグランドへランニングでもやりに行く途中なのでしょう、柔道部の連中7〜8名が道着をきて、ぼくの前にゾロリと勢ぞろいしたのです。ぼくは思わず息をのんでしまいました。

すると、その先頭にいた男子が(この人はぼくと同じ小学校出身の二級上でKという名でした)こう言いました。「おまえ、赤木さんの弟なんやから、柔道部に入れ。」ぼくは再び息をのみました。

彼の言う「赤木さん」とは、前回紹介したぼくの兄のことです。兄はぼくより三歳上なので、すなわち、兄が中学を卒業した春に、いれかわりにぼくが中学に入学したわけなのです。そして、兄は柔道部のキャプテンをやっていたというわけです。
とまあ、話がこれだけならとても簡単なのですが、このKという男が、ぼくにとってはちょっとめんどくさい人物なのでした。

ここで話は、ぼくが小学校4年生、Kが6年生のころのことになります。

ぼくが小学校の運動場にいたとき、少しはなれたところにKとその友だち(彼の名はDという)が、ふたりで何かやっていました。見てみると、Dがさかだちの練習をしているらしいのですが、それがはっきり言ってヘタクソだったのです。まぁ、そりゃヘタクソだから練習してたんだろうけど、ぼくにはそれがおかしくて(自慢じゃないけどぼくはけっこう運動神経はよくて、さかだちなんか楽々だったのです)つい、クスリと笑ってしまったのです。

すると、けっこう距離はあったと思うのだけれど、かのDにそれを目ざとく見つけられてしまったのです。彼は一発で頭に血がのぼってしまったのでしょう「おい!おまえ!ちょっとこっちこい!」といって、ぼくの方に近づいてきました。しまった!なぐられる!とぼくが思ったとき、いっしょにいたKがDをおしとどめて、こう言ったのです。

「おい、おれの尊敬する人の弟さんに何する気や!」

ぼくはそのことばに、びっくりしたというか、ボーゼンとしたというか、とにかく目が点になったまま、Dからにげることも忘れていました。結局、Kは6年生のガキ大将的人物だったので、なんだかんだといってDをむこうにつれていってしまいました。

おれの尊敬する人の弟さん・・・つまり、Kはどうしてかわからないけど、ぼくの兄を尊敬していたのです。そして、兄がKに尊敬されていたおかげで、ぼくはなぐられずにすんだのでした。

さて、話は中学時代に戻りますが、このとき、ぼくの目の前に立っていたKは柔道部のキャプテンでした。つまり彼は、ぼくの兄を尊敬し、中学に入学して兄のいる柔道部に入り、(ガキ大将的腕力を発揮して?)兄の次期キャプテンになっていたのでした。
おまけに、ぼくと同い年のKの弟は、そのときもう柔道部に入っていて、連中のうしろの方でぼくを見てニコニコ笑っているのでした。

ぼくには、そういうふうなK兄弟の感覚がちっともわからず、ただあっけにとられていたのでした。

そのC

さて、柔道部の勧誘をのがれて、ぼくは結局バスケット部に入部しました。ホントは卓球部に入ろうかと思っていたのですが、練習がキツイというウワサにくじけて初志貫徹しなかったのです。

といっても、バスケ部だってけっこう練習はしんどかったのですが、女子のバスケ部にボールをおっかけてる姿がとても印象的な女の子がいました。その女の子は実はぼくのクラスメイトでもあったのですが、なぜかバスケやってる姿ばかりがやけに印象的で、クラスでいたときのことはほとんど覚えていないのです。

いや、その前にぼくの初恋の話をしましょう。それは小学校6年生のときでした。

ぼくの通った小学校では、校長先生の教育方針で、掃除の時間は学年のちがう生徒同士で班をつくって、一つの区域を掃除することになっていました。
6年生のたしか一学期だったと思いますが、ぼくの担当した”中廊下”の班には各学年から一名ずつ、つまり6名の生徒がいました。

そのときの5年生の女の子がぼくの初恋の相手で、おかっぱの髪を無理にたばねてるので、頭のうしろがうさぎのしっぽのように(と、当時は思っていましたが、今おもうと使い古した筆のように髪がピンピンはねていたようで、どこがうさぎなのかと不思議ですが、当時はそう思っていました)かわいくなっていました。

そのD

さて、初恋のころのぼくは、何かその女の子のことが気になるし、そばにいるとキンチョーしたり、やたらちょっかいだしたりするヘンな気持ちになるのだけれど、それが恋とかいうものであるとは気づかないでいました。

6年生の2学期になってその女の子とは掃除の班は別々になりましたし、結局その女の子のことは気になりつつも別にどうということなく、ぼくは小学校を卒業したわけです。

それで中学生になってそのバスケ部の女の子を好きになって、ああこれが恋なのかと気づいて、ついでに初恋の女の子のことも、ああ恋だったんだと気づいてしまったというわけなのです。

ぼくはバスケ部の女の子を好きになりかけていました。でも初恋の女の子のことも気になるのです。だれかが言った”片想いのふたまた”状態になってしまったわけです。

それで、どっちの女の子を本命にしようかと考えたのですが、どっちも捨てがたくて困ってしまいました。そこでぼくは、来年の春まで待ってみることにしました。

というのは、来年つまりぼくが2年生になる春になれば、ぼくの初恋の女の子が入学してくるわけで、その子に会ってみてからぼくの本命を決めようと思ったのです。

そのE

さて、話の都合上、いきなり中学2年生の春にとびますが、いよいよそのぼくの初恋の女の子が中学に入学してきたわけです。
新入生全員の氏名がクラス分けのために掲示されるので、彼女のクラスはすぐにわかりました。

そして、ある日の休み時間、さっそくぼくはその女の子を見に行きました。ところが・・・・・・ぼくは目を疑いました。

名札の姓は同じだし、なんとなく面影はあるし、他にそれらしい子はいないのだから、たぶんその子にまちがいないのだろうけど、その、なんというか、印象がまるで変わってしまっているのでした。しかも、あんまり良くない方に・・・・・・。

使い古した筆がうさぎのしっぽに見えたぼくの初恋は、そのとき終わってしまったのでした。
こうしてぼくの本命は、バスケ部の女の子になったわけなのです。

そのF

さて、そのころ仲のよかった男子6〜7名のあいだで、自分の好きな女の子がだれであるかを互いに発表しあうのがはやって、ぼくもそのバスケ部の女の子が好きなのだとみんなに言いました。

すると、まあこういうグループには必ずひとりやふたりは調子のいいやつがいて、無責任な発言をして人をその気にさせたりするものですが、ここにもそういうお調子者はいて、ぼくに「ああ、あの子やったらたぶん赤木に気があるで。いやいや、オレはけっこうカンがええんやから、保証する。」とかなんとか言うのです。

まあ、こういうやつのカンなんてちっともあてにならないし、保証なんてなんの保証にもならないのだけれど、それでも”気がある”などと言われるとやっぱりうれしくなってしまって、よし、それなら告白してみようかなぁ、などと思いはじめてしまったぼくも、他人のことは言えないけっこうなお調子者なのかもしれません。

そのG

さて、ところが、いざ告白しようとなると、なんせ初めてのことで、いったいどうやったらいいのかわかりません。そりゃあ、好きだってことを相手に伝えればいいのだということはわかっていますが、頭でわかっていることをすいすい実行できれば苦労はありません。

悩んだすえ、ぼくは手紙をかくことにしました。どんなことを書いたのかって? それがあんまり記憶にないのです。まぁ、もしはっきり覚えていてもここには書かないだろうけど、ホントにあんまり覚えてないんですよね。とにかく好きだってことを伝えて、つきあってほしいとか何とか書いたはずなんですけどね。

で、それを郵便で出そうかとも思ったのですが、なんかそれはイヤで、かといって直接手わたすのはあまりに気恥ずかしくて(何をかくそう、ぼくはシャイな少年であった)、結局、放課後下校直前のその女の子のかばんの中にそっと手紙を入れておくという計画にしました。

そのH

まあ、ドキドキしたことだけは今でも覚えてますけど、とにかくある日、ぼくはチャンスをうかがってその手紙を彼女のかばんにしのびこませました。そして、そのあと彼女がかばんをあけずにそのまま学校を出て帰路につくのを確認したのです。

ところで、その日はたしか連休の前日で(たぶん5月のゴールデンウィーク前)、ぼくはもう次の日には、告白を手紙でしてしまったことを後悔していました。
というのは、たとえば直接目の前で告白したのなら、良いにしろ悪いにしろ、彼女の反応を少なくともすぐに見ることができますが、手紙ではそれができないのです。

ぼくはおおいに心乱れながら連休をすごすことになってしまいました。良い返事をもらった自分を想像してニヤニヤしたり、逆に悪い返事をもらった自分を想像しておちこんだりしていたにちがいありません。
そして、いろいろな返事のパターンを考えては、それにどう対応するか必死で考えていたろうと思います。そして、そんなことやってるのに疲れて、電話しようかと思ってはやめたりしたにちがいありません。

とにかく、そういうひとりずもうの連休はおわって、学校に行く日がやってきました。

そのI

さて、連休のあけたその日、たぶん昼休みだったと思うけど、ぼくはそのバスケ部の女の子といちばん仲の良かった女の子に呼びだされました。ぼくが告白したことを知っている例の6〜7名の男子は、ぼくが教室を出ていく姿を注目していたにちがいありません。

人通りの少ないところにバスケ部の女の子は待っていました。ぼくは彼女と彼女の親友の前で返事を待つことになりました。すると親友の女の子が、あの手紙は本気なのかとぼくにたずね、ぼくはもちろん本気であると答えました。

すると、親友の女の子は言いました。この子(バスケ部の女の子)は、実は入学した頃は赤木君のことが好きだった、でも、今はMくんの方が好きなのだ・・・・・・。ぼくはぐっとつまってしまいました。

この”Mくん”というのは、これまたクラスメイトでバスケ部の男子なのですが、おまけに例の6〜7名のグループの一員であり、もひとつおまけに、Mくんは毎朝ぼくといっしょに自転車通学している仲のよい友人だったのです。

そのJ

つまり、ようするに、早くいえば、結局ぼくはふられたわけですが、連休のあいだにあれこれ考えた返事のパターンの中にこういうのはありませんでした。

ぼくがこのとき、いったい何を言ったのか、何をしたのか、今ではさっぱり記憶にありません。”Mくん”が後日語ったところでは、このとき教室にかえってきたぼくは、えらくきつい目でMくんをにらみつけたのだそうです。

さて、ぼくの告白をきっかけにして、例の6〜7名の男子たちは次々と自分の好きな女の子に告白をしはじめたので、クラスの他の男子の中にもつられて告白する者もでてきて、クラスは一時、告白が流行になってしまいました。

そしてその結果、うまくいったカップルはというと、これがみごとなくらいひとつもなくて、告白した男子たちは皆そろいもそろってふられてしまい、告白がブームになったように、ふられるのもブームになってしまったのです。

さて、その告白ブームの中、例の男子グループのひとり”Yくん”は、あろうことか、ふられたばかりのぼくにYくんの好きな女の子”Yさん”とのはしわたし役というか、キューピット役をたのんできたのです。

だいたい、告白してふられるブームの先駆者となったぼくにたのんでくるなんてどうかしてると思い、一応ことわったのですが、Yくんはなおもぼくにキューピット役をひきうけてくれとせまってくるのです。

そのK

Yくんはこう言うのです。”赤木くらいしか安心してたのめるやつはいない。赤木がやってくれてもしだめなら、あきらめがつく。”まあそこで、ぼくはYくんの信頼にこたえて、キューピット役をひきうけることにしました。

さて、ひきうけたのは良いのですが、実はぼくはYくんの好きなYさんという女の子を、クラスメイトでありながらあまりよく知りませんでした。同じクラスでも仲の良いグループと、あまりそうでもないグループができることはわかると思いますが、ぼくにとってはYさんは、それまであまりつきあいのないグループの女の子であったのです。
ぼくはどうしてYくんが、あまりつきあいのないはずのYさんを好きになったのだろうと不思議に思いました。

不思議に思うことは他にもありました。Yさんはメガネをかけていたし、それにどちらかというとにぎやかなタイプの女の子でした。
当時ぼくはメガネをかけている女の子は好きではなかったし、それにどちらかというと、おとなしくて静かな子が好みだったので、YくんがどうしてYさんのことを好きになったのか不思議でなりませんでした。

ぼくはキューピット役をひきうけながら、実は心の中で「へぇ、Yさんなんてどこがいいんだろう。」とつぶやいていました。
こんなことかくと、”Yくんの好みなんだからほっとけよ”と言われそうですが、実は、ぼくにとってもほっとけない事態になってしまうのです、これが。

そのL

さて、要するにYさんは当時のぼくの好みのタイプではなかったわけですが、なぜこんなことをしつこく書くのかといいますと、それは実は、ぼくがYさんのことを好きになってしまったからなのです。

これにはぼく自身びっくりしてしまいました。今となれば、「まあ、恋なんてそういうこともあるものだ」と冷静になれますが、当時のぼくにとっては予想もしてないことでした。

そのころには、YくんはもうとっくにYさんにふられていましたが、ぼくとしてはYくんに信頼されてキューピット役をやった手前もあり、Yくんには気をつかっていたはずなのですが、ぼくのYさんに対する感情は、そんな気づかいなんてどこかに吹っとばしてしまったようでした。

ぼくはこのことについて、Yくんにどう話したのか、いや、ちゃんと話をしたのかどうかも覚えていませんが、これからあと、Yくんとぼくとは、Yさんに対する片想いという共通の感情で結ばれた、よくわけのわからない親友になっていくのでした。

ぼくは高校生になってからYさんに告白して、これまた見事にふられてしまいました。失恋のことばかり書いてるけど、「中学時代の心に残っていること、一生懸命うちこんだことは何ですか」ときかれたら、ぼくはこのふたつの失恋をあげることでしょう。

とくに、Yさんに対する気持ちは、心の底にずっと流れていたようで、20歳のときのクラス会で、Yさんと一緒にカラオケでデュエットして、なぜかそのとき、ぼくにとってYさんが完全に過去のものとなったのだと気づくほどでした。

久しぶりにYさんに会えると喜んでいたYくんも、クラス会の帰り、「あいつ、変わったな」と言っていました。Yくんもそのとき、中学時代に別れを告げたのかもしれません。

(おわり)

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