きみ、聞いてくれたまえ。
ぼくの気分がどうにも堪えられなくなったとき、せまいながらも自分に与えられた生活の範囲で落ち着いて幸福に暮らし、その日その日をどうにか過ごし、木の葉が落ちるのを見ても冬が来るのだな、としか考えないひとたちを見ると、胸の不安がすっかりおさまるのだ。

   ゲーテ著 『若きウェルテルの悩み』 より
         (井上正蔵訳)