創刊のことば

はだかの王さま宣言

私はここに、次のことを認め、かつ宣言する。
私は、はだかの王様である。          

問  はだかの王様とは何であるか。
答  その出典は、有名なアンデルセン童話『はだかの王様』である。

愚か者の目には見えず、重さも感じないりっぱな衣を着て(または着たつもりで)、人々のとまどいの視線の中を、威風堂堂と行進する王様の姿は、とても楽しい。

ふつう、王様の国にやってきたふたりの織物師は、実は巧妙な詐欺師で、ありもしない糸でありもしない衣を織りあげたことになっているが、はたして本当にそうなのだろうか、と私は、疑問をさしはさんでしまうものである。もしかしたら、あのりっぱな衣は、実在したのかもしれないではないか。

なぜなら、織物師たちがウソをついたという証拠は何ひとつないし、その織物師たちの仕事ぶりを見た大臣たちは、一様に「りっぱな衣である」と証言している。おまけに当の王様さえ同様に証言し、なおかつ、その衣を臣民に自慢すべく大通りの大行進とあいなったからであり、しかも、王様が風邪をひいたり、肺炎をおこしたり、という話もきかないではないか。

さて、今となっては、1837年作のこの童話の真相を確かめることはできない。この結着は、各人がおのおのの心の中でつけるべきものであろう。すなわち、この衣が実在すると信じる者にとってはこの衣は実在し、信じない者には実在しないのである。

ただ私としては、今すこしこの決着を先おくりにしておいて、どんなに目をこらしても見えないのに、その不安な気持ちをおさえつつも、勇敢に衣をまとって進んでいくはだかの王様よろしく、私も威風堂堂、行進をしたいと思うものである。